無期転換への備えは大丈夫ですか?「何に気をつけなければならないの?」
平成29年4月
前回に続き、無期転換ルールについて解説します。今回は「無期転換」をした従業員についてどのようなことに注意しなければいけないかについての解説をさせて頂きます。
<大前提・よくある誤解>
ある意味最もよくある勘違いですが、「無期転換のルール」はその文字通り、雇用契約の「期間」を「無期」に「転換」されるだけの話です。この契約期間以外の条件は一切変更する必要がありません。「正社員」を始めとした他の雇用形態に転換する必要ももちろんありません。この点に勘違いが多いと共に、最も重要なポイントは「無期転換した社員」をどのように位置づけるかを会社のルールでしっかりと決めなければならないということです。このことを決めていないと様々な問題が発生する可能性があります。今回は、具体的な問題を幾つか例示して説明します。
無期転換の問題は、これまで「無期転換した従業員」が存在なかったために、会社のルールや個別の労働契約で、「無期転換する従業員」の扱いが整理されていないことです。一般的にはパート・アルバイト・契約社員=有期労働契約、正社員=無期労働契約となっている会社様が多いと思います。就業規則等において、そもそも適用する規則を別々に作成するなど、いわゆる正社員とパート社員とでは様々な処遇に違いを設けるなど、明確に区分されていました。問題となるのは、パート社員が無期転換をしたときに、どのような扱いとするのかということになります。
では、具体的な問題と何をしなければならないのかについてです。
1.無期転換した従業員はどうなる?(正確にはどういう扱いにしますか?ということ)
まず最初に整理しなければならないのが、無期転換後の従業員はどういう立場にするのかという会社の方針をはっきりさせることです。「ただ単に有期⇒無期になっただけで立場は変わりませんよ」という会社も多いと思いますが、一方で「無期転換するからにはもう少し責任のある仕事をしてもらいたい」と考える会社もあると思います。この点をはっきりさせることです。その上で、就業規則上の適用等、従業員の定義について再度チェックすることです。
例えば、「正社員とは」、「無期の雇用契約を締結している従業員」や「期間の定めのない労働契約を締結している従業員」と定義付けている就業規則は良く見かけます。逆に、「パート従業員」の定義としては「期間の定めのある契約を締結している従業員」としている場合も少なくありません。このような場合では無期転換した従業員はパート社員ではなく正社員としての扱いを受けることになります。そうなると無期転換後のパート社員は従来のパート社員の処遇ではなく、正社員の処遇が全て適用されることになるので注意が必要です。
無期転換後の従業員にはどのルールを適用させるのかを整理して、就業規則等に正しく反映するのが何より重要となります。無期転換従業員用の就業規則や無期転換従業員については何が適用されるかを明確にした条文を作ることが良いと思われます。
2.無期転換社員の定年はどうなるのか?
次に問題となるのは無期転換社員の定年についてです。無期転換の従業員を「パート社員」と同様の扱いとすること自体問題はありません。ただ、そうした場合に「パート社員」については定年の定めがないケースが多くみられます。「定年」という概念を無期転換の従業員に適用できるように就業規則に反映すべきでしょう。この点を明確に定めないと無期転換下パート社員は自分自身が辞めるといわない限り、何歳まででも働くことができることになります。
3.無期転換社員の人事異動や労働条件の変更はどうなるのか
正社員に対しては所定労働日や就業時間が就業規則条はっきり定められていることが多いですが、パート社員の場合、就業日数や時間について従業員ごとに個別に定めていることも珍しくありません。こうした場合、実務的には雇用契約を締結するたびに従業員と話し合い、就業日数や就業時間を見直しているケースが一般的といえます。問題となるのは、従業員が無期転換した場合、「契約更新」をすることがなくなるので、契約を見直すことも出来なくなってしまいます。就業規則において無期転換後も定期的に労働条件の見直しをが行えるように定めるのが良いでしょう。
これらは、無期転換社員に対し会社が注意しなければならないことのほんの一例です。会社としては無期転換後の社員に対してどのような扱いとするのかを充分に検討した上で、実際の就業規則等の社内ルールがその通りになっているかを早急に確認することが求められます。
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