厚生労働省による 企業名公表
平成29年5月10日、労働関係法令違反を行った事業所の名前が厚生労働省のHP上で公開された。この企業名の公表は昨年の12月に長時間労働削減推進本部により発表された「『過労死等ゼロ』緊急対策」の一環として今回企業名の公表が行われたのが経緯とのことのようです。今回は、この企業名公表の経緯と今後について検討したいと思います。
1.厚生労働省における企業名公表について
今回の発表内容そのものは厚生労働省のサイトから確認いただきたいが、厚生労働省はあわせて「掲載の基準」とし基準局長が各都道府県労働局長にあてた書面も公開している。 厚生労働省のリンクはこちら
<公表基準>
その書面によれば、今回の公表対象は
① 労働基準関係法令違反の疑いで送検し、公表した事案。
②「『過労死等ゼロ』緊急対策」で発表している都道府県労働局(以下「各局」)の局長が指導し、それを公表した事案。
この2タイプの事案をまとめてホームページ上に掲載するというものである。(②の局長指導の詳細については小職が以前ブログに書いております。参照されたい場合はこちらをクリック下さい)また、公表は各局がそれぞれ行い、厚生労働省(以下「本省」)でも「全国版」を掲載するイメージとなる。
その意味で、今回厚生労働省のHPに掲載されたものは、既に各都道府県労働局がそれぞれのHP上に4月18日付として公表しているものを本省が「全国の公表事案」として取りまとめたものであり、特に新しく公表されたものではありません。今後どの程度の頻度で各局のホームページが更新されるかは不明だが、本省のホームページでは毎月更新するとされています。
<公表期間>
概ね1年間掲載とのこと。具体的には公表後1年経過後の月末にホームページ掲載から削除されるのを基本としているが、改善が見られた場合には1年未満でも削除することがあるとのことです。
2.公表内容の分析
今回は昨年10月から今年3月までの6ヶ月間の事例の公表が公表されました。局長指導による企業名公表の制度については、その制度自体が今年1月に発表されているため、今回の公表事案には局長指導事案はなく、書類送検事案のみとなっています。また、送検事案の多くは労働安全衛生関係の違反によるもので労基法の違反等は少なかった。安全衛生関連以外は最低賃金違反と労基法32条違反(36協定の締結なし、或いは、締結している時間を越える労働)といえる結果だった。
以下は首都圏での公表事案件数をまとめたもの。(カッコ内は公表事案のうち労働安全衛生関連でない事案の件数)
茨城局 7件 (1件)
栃木局 3件 (0件)
群馬局 4件 (1件)
埼玉局 2件 (2件)
千葉局 9件 (1件)
東京局 11件 (7件)
神奈川局 8件 (2件)
山梨局 2件 (1件)
<考察>
今回の公表は、「『過労死等ゼロ』緊急対策」の一環とされてはいますが、公表内容が昨年10月~今年3月のものであったため、緊急対策を受けての影響はまだ見られていない。実際に緊急対策の影響を受けた局長指導による公表がどの程度見られるのかは時間の経過とともに見守るしかない。ただ、1年間企業名が本省及び各局で「さらされる」こととなるので、企業名の公表に至らないように充分な注意が必要といえます。
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