働き方改革推進の法整備に関する法案要綱ー労働基準法の改正案② その他の労基法改正
平成29年10月
前回、「働き方改革を推進するための関係法律の整備」における労働基準法改正の改正案について時間外労働の上限規制について解説しました。今回は労働基準法の改正案解説の第2弾として、時間外労働の上限規制以外の改正案についてまとめて解説します。
<その他改正案の項目>
今回の改正案については、時間外労働の上限規制の他に以下5つの項目が検討されております。いずれも平成27年の改正案から検討されていた内容です。 この中で企画業務型裁量労働制と高度プロフェッショナル制度については複雑で詳しい説明が必要な上に、連合による反対意見が強いことから、今般の総選挙の行方次第で内容も大きく変更となる可能性もあり、改めて別途解説することといたします。今回はこの中の①~③について簡単に説明します。
① 60時間を超える時間外労働の割増賃金の適用猶予の廃止
② 年次有給休暇制度の見直し
③ フレックスタイム制の見直し
④ 企画業務型裁量労働制の見直し
⑤ 高度プロフェッショナル制度
<改正案の内容>
① 60時間を超える時間外労働の割増賃金の適用猶予の廃止
現在の労働基準法では法定時間外労働については通常の賃金の25%以上50%以下の割増賃金率で計算して支払うこと。ただし、1箇月での時間外労働が60時間を超えた場合には50%以上の割増賃金率としなければなりません。このただし書きの部分について、中小企業(中小企業基本法に定める中小企業)は適用が猶予されていました。
今回はこの適用猶予が廃止されることになります。ただし、施行時期について一定の猶予が定められております。
② 年次有給休暇制度の見直し
年次有給休暇のうち5日については、付与日から1年以内に時季を指定して取らせなければならないとする改正です。ただし、労働者が自ら時季を指定して5日取得している場合(普通に労働者が年次有給休暇を消化)や、労使で取得時季を定める『計画的付与制度』等で5日以上取得することになっていれば、使用者側で別途5日取得させる義務は発生しません。
もう一つ法案には年次有給休暇管理簿を作成することが新たに義務付けられています。
③ フレックスタイム制の見直し
現在のフレックスタイム制度は清算期間の上限が1箇月ですが、3箇月までの清算期間が認められることになります。これに伴い、1箇月を越える期間を清算期間とした場合には、以下の義務が新たに加わります。
・1箇月ごとに区切った時に、区切った1箇月での労働時間は週平均50時間までさせることができる
(フレックス制度といっても1ヵ月ごとの平均労働時間は一定以内でなければならない)
・1箇月を超える清算期間の場合の労使協定は労基署へ届け出なければならない。
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