注目すべき最高裁の判断-同一労働同一賃金
平成30年3月
今回は今後の労務管理に大きな影響を及ぼすとされる2つの最高裁判断について簡単にコメントしたい。今月上旬、最高裁は2つの裁判についての弁論期日の発表を行なった。いずれも労働契約法20条にかかる注目の裁判で、大いに注目したい。
注目裁判の事案
その裁判とは以下の2つである
① 長澤運輸事件
② ハマキョウレックス事件
どちらの裁判のケースも小職が判決の発表当時取り上げているので興味のある方は以下をクリックして当時の小職のコメントをご覧下さい。
長澤運輸地裁判決 長澤運輸高裁判決 ハマキョウレックス高裁判決
事案の詳細・何故注目すべきなのか
両事案とも大変重要であると考えるが、その重要な理由と何に注目すべきなのかを簡単に説明したい。
① 長澤運輸事件
<事件の内容>
長澤運輸事件は定年退職後の継続雇用により定年後も引続き同社に雇用されたトラックの運転手が会社を提訴した事案。提訴したドライバー(3人)は定年退職後も定年前と全く同じ内容の業務を行なったにもかかわらず、賃金は3割程度減額されたことで、この減額が労働契約法20条違反であるとした。
本件は有期雇用労働者と無期雇用労働者の処遇と比べたというよりも、同一の労働者が無期雇用の正社員だった時の処遇と定年退職後の有期雇用となった時の処遇を比較したものであるため、厳密に言えば労働契約法20条の違反なのかの疑問は残る。
この裁判の結果だが、地裁判決では原告側が勝利し、賃金の減額が違法とされた。その一方、高裁では逆転の判決となり、3割程度の賃金減額は違法ではないとの判断が示された。
<注目ポイント>
今回の判決は定年退職後の賃金のあり方に大きな一石を投じることとなる。最高裁が地裁判決を支持し賃金減額を違法とした場合には、今後の定年後の継続雇用のあり方に大きな影響を与えるものと考えます。大いに注目したい。
② ハマキョウレックス事件
契約社員には支給されないが正社員には支給される手当てについて、その不支給とすることの合理性が争われている事案。地裁判決に比べ、高裁での判決は不支給とすることが不合理であると判断された手当の項目が増えている。働き方改革における『同一労働同一賃金』が議論されているが、この同一労働同一賃金の考え方にも大きな影響を直接的な与えることが想定される。
最高裁が、どのような手当を有期雇用労働者に支給しないことを『不合理』と判断するのか大いに注目したい。
今後のスケジュール
弁論期日
長澤運輸事件 4月20日
ハマキョウレックス 4月23日
最高裁判所の判断
5月~6月の見通し
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