「労務裁判ニュース」 有給休暇付与日数に関する訴訟
大分県の中学校で30年以上にわたり図書館の司書として勤務していた非常勤職員が有給休暇の日数が10日しかもらえていなかったことに対して、もらえなかった有給休暇の日数にあたる賃金の支払いを求める訴訟を起こし、12日大分地裁が下した判決についてコメントしたい。
<訴訟の内容・裁判所の判断>
今回の訴訟は30年以上勤務した非常勤職員の男性に対し、雇用主である市が毎年有給休暇日数が10日であると通知していたもの。同職員は、本来もらえるべきだった有給休暇がもらえなかったので、その分にあたる賃金を支払って欲しいという訴訟だった。裁判所は、形式的に1年契約の雇用契約とはいうものの、勤務の実態が通常の社員と判断できると判断し、あたかも10日しか有給休暇が発生しないような情報を出したことが違法であると判断した。
<損害賠償額>
注目に値するのは、実際の損害賠償命令は原告が求めた400万円超に対し22万円の支払い命令にとどまったことである。労働基準法上で認められている有給休暇の日数を下回る日数しか付与していなかったことは違法としながらも、この金額にとどまったのはなぜか。
この男性はそもそも有給休暇を数日しか取っていない年もあった。従って「有給休暇がもっと付与されていたとしても、実際に取得したかどうかわからないですよね。」という判断で、逆にいえば「有給休暇がもっと付与されていたら、その有給休暇を取得してましたよね」と判断されるもののみ損害として認めましょうというというのが今回の裁判所の意向のようだ。
具体的に、病欠等の欠勤(無給での欠勤)を取った日は有給があれば有給を使っていましたねということで、その分が認められた形。
<有給休暇について>
ここで、有給休暇の制度について確認する。詳細は労働基準法39条に年次有給休暇の定めがあるので参照されたい。
6ヶ月間の継続勤務出勤率が80%を超えている場合10日の有給休暇が付与される。以降1年6ヶ月⇒11日、2年6ヶ月⇒12日、3年6ヶ月⇒14日、4年6ヶ月⇒16日、5年6ヶ月⇒18日、6年6ヶ月⇒20日。これが付労基法上の与義務である。勤務時間や日数の短い従業員には少ない日数の付与となるケース(比例付与)もあるが、通常の社員と同じ勤務の場合は雇用形態にかかわらず付与義務が発生する。
今回のケースでは33年間継続勤務されていたので20日の付与義務があった可能性が高い。
<有給の買取り>
もうひとつ、今回の判決にかかる部分として有給休暇の買い取りという問題を認識しなければならない。有給休暇を買取る行為は労基法39条違反とされている。(今後詳しく説明の予定)これが有給休暇を取得していたと言えない場合には損害として認めないという判断の根っこにあると思われる。
有給休暇の制度・有給化の買取り等に関してご相談があればお気軽に相談ください
電話 03-6427-1120
携帯電話 090-8595-5373
メール shishikura@ks-advisory.co.jp