労務管理を考える 「同一労働同一賃金」
平成27年1月27日
先週、安倍総理大臣の施政方針演説が行われた。この中で介護離職の問題を始めとする現在の日本を取り巻く労働環境にも多くのコメントがありました。その中で取り上げられた重要なキーワードの一つとして「同一労働同一賃金」がある。 この「同一労働同一賃金」が一体何なのか、企業の労務管理という観点から何を注意しなければならないのか、ということに関して疑問に思ってきた。ここで皆さんと一緒にこのテーマを考えてみたい。
① 「同一労働同一賃金」って何?
一般的に「正社員」と「パート社員」・「アルバイト社員」には、残念ながら賃金を始めとした待遇に差がある。こうしたパートやアルバイトの「非正規労働者」は昨年11月の厚生労働省の発表では、ついに4割を超えた。そのうち7割程度を占めるといわれるのが女性労働者。こうした女性労働者の労働条件の改善も視野に入れ、昨年は「パートタイム労働法」の改正や「女性活躍推進法」の成立があった。『同じ内容の仕事をしているのであれば、「パート社員」や「アルバイト」という呼称だけで差別するのはおかしいですよね』というのが主旨で、その主旨には私も賛成するところである。
② 本当の意味で「同一労働」は存在するのか? 正社員とパート社員では責任の度合いが違うのでは?
素朴な疑問がここにある。そもそも、「同一労働」ってなんだろうか? はたして本当の意味での「同一労働」は存在するのであろうか?ということである。昨年施行された「同一労働同一賃金推進法」においても「業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度その他~」という極めてあいまいな表現にとどまっている。「パート社員」といわれる従業員の中に「正社員」と同じ所定労働時間を働いているパート社員も多くいる。こうした「パート社員」と「正社員」が同じ部署にいて、一見、同じような仕事をしているように見える場合もある。これを「同一労働」と呼ぶのということであろうか??
これは私の私見だが、「正社員」という立場である以上、そのときに与えられている「目の前の仕事」をこなすだけでなく、「業務効率の改善を始め、会社の業績をどう伸ばしていくのか」ということを考える責任が「正社員」には常にあるように思う。「パート社員」が無責任で良いというわけではないが、少なくても経営者からすれば「正社員」には「パート社員」と違い、「会社を良くする方法を常に意識する」ことを期待するだろう。その時点で本来は「同一労働」ではないと私は考える。
③ 事業主が考えるべきこと
大きな流れとしては「同一労働同一賃金」を強化する流れになっていくのであろう。ゆくゆく「同一労働」というものの定義が定まってきたときに、「正社員」の仕事と「パート社員」の仕事が「同一労働」とならないように注意が必要である。前述のとおり、そもそも会社側が「正社員」に期待していることは、「単に与えられた仕事を処理する」ことではないはずである。人事制度や評価制度を整理・見直しをする良い機会ではないだろうか。
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