裁判例から学ぶー「雇い止め」における同意書の有効性について
2015年3月18日
先日、宍倉社労士の法律相談⑤としてご案内しました、「有期雇用の雇止めルール」ですが、注目に値する裁判がありましたので報告します。
<訴訟の内容>
NTT西日本の子会社で契約社員として雇用されていた職員が昨年(2015年)9月に雇い止めされた事案。この会社は人員削減を行う必要があって、それに伴う雇止めを行ったという。この際、再就職先をあっせんする代わりに、その条件として雇止めに同意する書類の提出を求めたというのが経緯のよう。
訴えを起こしたのは、雇止めされた男性職員6名で、いずれの社員も複数回にわたり契約の更新がなされ、通算の勤務期間が4年半から10年を超えるになっていたとのこと。
この事案に対し、岐阜地裁は雇止め以降の賃金の仮払いを命じる判決を出した。
<今回の判決に至るの経緯>
人員削減の必要性については定かではないが、人員削減に伴い再就職先をあっせんする条件として、雇い止めに同意する書類の提出を求めたとされていたことに対し、裁判官は「労働契約法の保護を受ける社員の主張を封じるためと推認される」と指摘したという。
本ケースのように、労働者から「雇止めに同意します」という内容の書類の提出を受けていたとしても、それが雇用関係が終了した不安な心理に付け込んで書類を書かせたものと判断された場合、有期雇用契約の同意による終了とはいえないというのが裁判所の判断ということであろう。
<雇い止めについて考える>
3月12日に投降した有期雇用の雇い止めルールを参照頂きたいが、(文尾にメモを添付した)有期雇用契約を一定期間以上継続して更新してきた労働者に対して雇止めを行うことの難しさを改めて認識することができる。「再就職先をあっせんするから」といって雇止めの同意書にサインをさせたとしても、それが認められない可能性も高いということである。結果として労働契約法を踏まえて、当該雇止めの有効性が検証されることとなり、解雇法理が適用される可能性が高まる。
この判決の結果として雇止めを行った9月以降の賃金の仮払いが命じられているが、これは6名分の労働者の半年分の給与を支払うということであり、被告会社にとっては相応の経済的ダメージを負うことになったといえる。雇止めについてはやはり慎重に検討して行うべきと改めて実感する。
宍倉社会保険労務士事務所では有期雇用契約の適切な締結や、雇止めに関して、具体的な対応に関してアドバイスをさせて頂いております。お悩みの方は一度ご連絡頂ければと思います。
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