有給休暇について考える③ 有給の買い取りについて
平成28年6月
先月から有給休暇の制度について、解説してきましたが、今回は最終回として、有給休暇の『買い取り』というテーマにそって、有給休暇と金銭支給の考えに絞った論点整理をします。
3.有給休暇の買い取りについて
有給休暇の『そもそも』論と賃金支給との関係についてまずは整理したい。
昭和30年の通達(基収4718)には、有給休暇の取得に関して、以下のような具体的な文言がある。
「年次有給休暇の買上げの予約をし、これに基づいて39条の規定により請求しうる年次有給休暇の日数を減じ、ないし、請求された日数を与えないことは、39条違反である」
有給休暇は心身をリフレッシュして労働者の心と体の回復を図ることを目的としており、「あらかじめ有給休暇を与える代わりに金銭を支給するのは駄目ですよ」ということです。
むしろ、有給休暇の「買い取り」は休暇取得の制約となるので禁止されています。
特に、勤務が不定期であったり、パート・アルバイト等でシフト制の勤務であった場合、出勤できる日にシフトを組むケースが多く、結果として有給休暇を消化できないケースが多い。
こうした場合にでも有給休暇を取得したものとして金銭を支給することは許されないことになります。有給休暇を取得することを想定したシフトを組むなどの工夫が必要になります。
ただ、この「有給級休暇の買い取り」が法律上許されている場合が2つあります。
① 有給休暇の権利が消滅する場合
② 法律以上の有給休暇の日数を与えている場合
後者の、法律上の有給休暇日数を超えている場合とは、労働基準法上で定められている日数(最初の6ヶ月経過時点で10日、以降11日・12日・・・・20日)よりも多い日数を付与する制度を会社で導入している場合、「その多く付与した日数分は買い取りをしてもいいですよ」ということです。ただ、実際のところは、多くの企業が労基法の定め通りの日数を付与しているので希なケースといえるでしょう。
注意が必要なのは①のケースです。考え方としては労働者が有給休暇の権利を行使しないまま、退職する場合や、2年間の時効で権利が消滅してしまう場合です。与えられた権利を行使しないまま消滅させてしまうのは「労働者には気の毒」という発想から、『買い取りをすることは違法とまでは言えない』という位置づけにしています。ただ、一方で労働者は「有給休暇を取れるのに取らなかった結果」という考え方もできますので、労働者側に買い取りの請求権はありません。買い取るかどうかは使用者側の任意です。
以上、3回にわたって有給休暇について整理してきましたが、このテーマでのお話はこれが最後です。より詳細のお話が気になる方はいつでもご連絡下さい。
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