『制度改正』 社会保険適用の新しい基準(平成28年10月より)
平成28年7月
いよいよ来週から8月です。関東地方もようやく本日梅雨明けしたようです。何とか7月中の梅雨明けとなりました。これから夏本番です。
さて、今年の10月より社会保険の適用対象が短時間労働者にも拡大されます。この適用基準拡大がいよいよ目前に迫ってまいりました。厚生労働省や年金事務所からそれぞれのHP等で、詳細の案内やQ&A、パンフレットの作成で周知活動が行われておりますので、既にご承知の方も多いとは思いますが、今般の適用枠拡大について、改めて確認したいと思います。
ここでは、現在の適用基準について基本的な確認と、今回の適用枠拡大について重要ポイントを改めてチェックしたいと思います。
1.現在の適用基準の確認
社会保険は適用事業で働く一定の要件を満たす労働者が加入対象者となります。まず、適用事業についてですが、『法人』は原則として加入することが義務付けられている、いわゆる強制適用事業となります。一部の個人事業主で適用事業でない場合がありますが、ほとんどの使用者が適用事業になります。
一方、労働者としての加入要件は、所定の労働時間が『通常の労働者の1週間の所定労働時間の4分の3』以上で、かつ、所定の労働日数が『通常の労働者の1ヶ月の所定労働日数の4分の3』以上となっております。これが現在の制度です。
適用対象の労働者になるかどうかは、使用者や本人の意思に関わらず、上記要件に該当すれば適用対象となり、該当しなければ適用対象になりません。この点正しく認識頂く必要があります。
時おり、『ウチは頑張れば社会保険に入れてあげるよ』、とか『私は社会保険に入りたくないので結構です』ということを耳にしますが、これらはいずれも間違いです。社会保険は使用者や労働者本人が勝手に選択できるものではありません。
今回、変更になるのはこの適用基準です。従来の基準に加えて、新たに『短時間労働者』を対象とした基準が設けられることになるというものです。社会保険の制度そのものに変更はありませんが、従来の制度では適用除外となっていた労働者が新しい基準では適用除外にならなくなるケースがあるので、充分な注意が必要です。
2.適用枠拡大についての解説
さて、基本がわかったところで、改めて今回の制度改正について確認します。今回の適用枠拡大の対象となるのは『特定適用事業所』に勤める『短時間労働者』です。尚、上記で確認した、従来の適用要件がなくなるわけではありません。
(1)特定適用事業所とは
平成28年10月の適用基準拡大時点での該当・不該当について
特定適用事業所となるかどうかは、常時500人を超える労働者を雇用しているかどうかで決まります。具体的な判材料断としては、現行制度での社会保険適用となる労働者(被保険者)が500人を超えていれば特定適用事業所になります。月によって被保険者の人数が変動場合に特定適用事業所となるかどうかに関しては、昨年10月~今年の9月までの、直前の12ヶ月のうち6ヶ月で500人を超えていれば、特定適用事業所となります。被保険者の数については年金事務所が把握しておりますので、手続き上は年金事務所から「特定適用事業所になりますよ」というお知らせが届きます。一方、直近11月のうち5ヶ月で500人を超えている場合、「最後の月に500人を超えるか否かで特定適用事業所になるかどうかが決まる」微妙なところにいるので、そうした事業主には「特定適用事業所になるかもしれません」というお知らせが届くことになっています。
適用基準拡大以降の取扱い
開始時に特定適用事業所となっていない場合でも、その後「直近12ヶ月のうち被保険者が500人を超える月が6回」となった時点で特定適用事業所となります(この時の被保険者の数には適用拡大となっている短時間労働者の人数は含まず、あくまでも従来基準での人数が基準となります)。
特定事業所の該当・不該当に係る留意事項
ひとたび特定適用事業所になると、その後500人を下回ったとしても特定適用事業所のままになりますので、注意が必要です。また、500人に満たない事業主が任意で特定適用事業所になることは、現時点ではできません。これについては一般の社会保険の適用事業所同様の任意加入については国会で審議中ですが、本件は次期国会以降に持ち越しとなっております。
(2)対象となる短時間労働者であるかどうか
もうひとつの要件である、『短時間労働者』になるかについて検証しましょう。対象となる短時間労働者となるのは、以下の4つの要件をすべて満たしている労働者です。全てを満たしていれば、本人の意思に関わらず適用対象の労働者となります。
①週の所定労働時間が20時間以上
⇒労働契約等で週の所定労働時間が定められていない場合は、週平均で20時間以上か否等、労働の実態で確認することになります。時間外労働はこの時間に含めませんが、対象労働者となることを回避するために労働実態とかい離させた所定労働時間を設定することは問題です。
②雇用期間が継続して1年以上見込まれる
⇒あくまでも28年10月時点での『見込み』で判断されますので、仮に1年以上雇用されているものでも、1年以内に雇用が終了することが確定している場合は含まれません。逆に、雇用の実績が1年に満たない場合でも、今後1年以上雇用されることが見込まれていれば対象になります。尚、1年の有期雇用契約で「更新する場合がある」ことが明示されているケースは『1年以上見込まれる』対象に含まれます。
③月額賃金が8万8千円以上
⇒時間外・深夜・休日の割増賃金や1ヶ月を超える期間に支払われるものは除かれます。
④学生ではない
⇒夜間学部や定時制学校のように昼間労働することを想定している学生は「学生ではない」に含まれる
細かい部分に関しては厚生労働省のHPや年金事務所から案内があります。HPやパンフレットで確認頂くか直接お問い合わせください。もちろん弊所に問い合わせ頂いても結構です。
適用枠拡大に関する厚生労働省のサイトはこちらをクリックしてください。尚、本ページの最下部に労働者向けリーフレットの案内があります。必要に応じてご活用ください。
3.社会保険の適用を受けることに反対の労働者への対応
最後に、労働者側の意向としてどうしても社会保険の適用対象となりたくないという場合は、今までの働き方を変えて、所定労働時間を20時間未満となるようにするほかありません。尚、前述したとおり、所定労働時間のみを20時間未満として労働実態はそのままで所定労働時間外の労働が増える形は問題があります。
ご不明な点がありましたらお気軽にお問い合わせください。
宍倉社会保険労務士事務所
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