無期転換への備えは大丈夫ですか?そもそも無期転換権って何?
平成29年4月
今期最初の投稿として、有期労働契者の無期転換について取り上げたいと思います。 無期転換の問題が本格化する平成30年4月まで1年を切った今、無期転換権について改めて考える必要のある方が多いのではないでしょうか。そこで、そもそも「無期転換ルール」がどんなルール・制度であるのか、そして、実際に「無期転換」した従業員に対してどのような対応をしなければならないのかというテーマで、2回に分けて解説してまいります。今回は、「無期転換ルール」について指差し確認を致します。
次回は「無期転換、何に気をつけなければならないの」を取り上げます。こちらをご覧になりたい方は『ここ』をクリック
1.有期労働契約とは
「無期転換ルール」は、ひと言で言えば「有期労働契約」で働く従業員が、一定の期間働き続けた場合に「無期労働契約」に転換できるというものです。そこで、この「有期労働契約」が何か?ということですが、これは、「契約社員」・「パート社員」・「アルバイト」、様々な呼び名で雇用していると思いますが、その呼び名にかかわらず、契約の期間が定められている労働契約を言います。例えば、1年や6ヶ月といった契約期間を設けて働いている労働者は、1週間の労働日数や1日の労働時間にかかわらず、皆さん例外なく「有期労働契約」で働いていることになります。
2.無期転換ルールとは
次に、「無期転換ルール」はどのようなルールなのか?を確認します。「有期労働契約」はその契約期間が終わるときに更新することがあります。その更新を何回か繰り返して、結果として会社に連続して雇用されている期間が通算して5年を超えるとき、その従業員には「無期契約」に切替える権利が発生するというものです。このとき、会社側にはこの「無期転換」を拒否することは出来ず、労働者が「無期転換してください」を申し出たときは、その時の有期労働契約が満了したら、次は『自動的』に無期労働契約に切り替わるというものです。
3.無期転換は「いつ」発生するのか
ポイントは、上記の通り「5年超」です。ただし、この法律が新たに施行された平成25年4月以降に結ばれた契約のみが対象となります(それ以前の労働契約は関係ありません)。例えば、平成23年から従業員として働いている方が毎年契約を更新していたとしても、対象となるのは平成25年4月以降に更新した労働契約だけです。また、「継続して5年」であることも要件です。何回か労働契約を更新していても、雇用契約のない期間(クールング期間)が一定以上あれば、雇用契約のない期間以前の期間は対象になりません。
本題に戻りますが、例えば平成25年4月以降、ちょうど1年間の雇用契約を毎年更新してきた従業員は現在の契約が満了すると通算の契約期間が丸4年となり、次の契約で5年目に突入することになります。この方々の次の契約期間もピッタリ1年であれば、契約期間の満了時の通算契約期間が5年となりますが5年超にはなりません。このため、このケースでは、無期転換権はまだ発生しません。しかしカレンダーの都合等で、次の契約期間の満了時点で通算した雇用期間が5年を1日でも超えていれば、「5年超」になりますので、次の契約期間中から無期転換権が発生します。その場合、契約期間中のいつでも「無期契約に転換してください」と会社にいえば、契約が満了する時点で、それ以降は『無期』の契約に切り替わることになります。このあたりについては小職の過去の書き込みにもう少し詳しく書いていますのでご興味のある方はこちらからご覧下さい。
4.無期転換を防ぐ方法はあるのか
よく聞かれる質問ですが、会社側に無期転換を防ぐ方法はありません。有期労働契約は労働契約に期限があるので、「期限が来たら通算の期間が5年を超えないように更新しなければ良いだけの話ではないか」とお考えの方が多く見られますが、そう簡単ではありません。労働契約に期限があるからといって、労働契約を更新するかしないかについて完全に自由ということではありません。労働契約満了時に契約更新せず、労働関係が終了することを一般的に「雇い止め」といいますが、この「雇い止め」にはいくつもの注意点があります。無論、「雇い止め」すべき正当な理由と正しい手続があれば「雇い止め」自体は可能ですが、単に、まもなく「無期転換」の権利が発生するからといって「雇い止め」をすることは大きなリスクを伴います。 この雇い止めについては以前小職が投稿しておりますので、興味のある方はこちらをご覧下さい。
また、雇い止めが出来る場合と出来ない場合については個別に相談を承っておりますのでお気軽にご連絡下さい。
ここまでが無期転換の権利そのものについて解説しました。次回は、無期転換となった従業員に対してどのように対応しなければならないのか?よく見落としがちなポイントを具体的に解説します。
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