働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法案要綱を解説
平成29年9月
この秋の臨時国会でついに、『働き方改革』で議論されてきた各種法改正が本格的に議論される見通しである。特に労働基準法の改正は平成27年から継続審議の状態が続いていただけに、今国会での成立が大きく期待されていた。
しかし残念ながら、ここへ来て衆議院の解散の話が本格的になされているので、この秋の成立も見送られる可能性が出てきた。
秋の臨時国会での法案提出を視野に入れ、今月に入って厚生労働省では『働き方改革を推進するための関係法令整備に関する法律案要綱』を作成し、それを労働政策審議会で審議されたばかりである。
小職としても国会における議論をある程度みながら、具体的な改正について整理したいところであったが、かかる状況下、既にまとめられた法律案要綱について簡単に整理して皆様に案内したい。
法案要綱では、具体的に8つの法律の改正が検討されている。またこれらの改正要綱について労政審で「おおむね妥当」した。
ここでは要綱で提案された改正点について、それぞれの法律ごとに簡単に整理しております。
現時点では要綱をベースにしておりますので、必ずしも正確ではない点、また、今後提出される改正案が今般の法案要綱と異なる可能性がある点ご了承いただきたいと思います。
労働基準法の改正については非常に重要であり、別途より詳しい説明を近日お届けします。
1.労働基準法の改正について
・長時間労働の抑制及び多様な働き方に対応する改正
・別途まとめて解説します。
2.じん肺法の改正
・労働者の心身状況の情報を収集し適切に管理するための改正
3.雇用対策法の改正
・雇用対策法の題名を以下の通り変更し、法の目的や基本方針を明確にしています
『労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律』
4.労働安全衛生法の改正
・面接指導の義務化 以下の者で、厚労省の定める時間より労働時間等の長い者が対象
①労働基準法の改正案後も適用除外となる新技術の研究開発業務に従事する者
②新設される高度プロフェッショナル制度の対象労働者
・産業医・産業保健機能の強化 産業医と事業主の関わり等に関して明確にする法改正
5.労働者派遣法の改正
・差別的な処遇等に対応するための法改正等
・別途解説します
6.労働時間等の設定改善に関する特措法の改正
・この特措法は事業主が行なうべき労働時間関連の努力義務を定めた法律であるが、今回その自主的な
努力(努力義務)として以下が加えられる。
①労働時間・休日・年次有給時季とする「労働時間の設定」に深夜業回数・就業~始業の時間が追加。
②事業主等の責務として、就業から始業までの時間(インターバル)の設定。
7.短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の改正
従来は短時間労働者に対する差別的扱いを禁止する目的の法律でしたが、短時間労働者のみならず有期雇用労働者を加えて 短時間労働者と有期雇用労働者に対する差別的な扱いに関する定めをしています。
(1)法律の題名を「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」に変更する
(2)従来この法律で定めていた以下の条文を有期雇用労働者にも適用する
『短時間労働者の待遇の原則】、『通常の労働者と同一すべき短時間労働者への差別的扱いの禁止』、『賃金』、『福利厚生施設』、『事業主が講ずる措置の内容等の説明』
・ 特に、『短時間労働者の待遇の原則』については有期雇用労働者を追加しただけではなく、「処遇」について、基本給・賞与・その他の処遇と具体的に明記している点に注目したい
(3)短時間労働者の判断で「通常の労働者」を従来の「事業所単位」ではなく「事業主単位」とした。
同じ事業主に雇用される者でも、事業所によって労働時間の長さが異なる。このため特定の事業所で雇用される「通常の従業員」の所定労働時間が会社全体で見た時の「通常の労働者」の所定労働時間よりも短い場合等が想定されるので、これに対応したもの
8.労働契約法の改正
・期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止(労働契約法20条)の削除
この労働契約法20条の定めが前述の『短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律』の改正により同法律に含まれるようになったことによる削除案。
以上が、法律案の全容である。今回は労働基準法の改正が目玉となるため、こちらは別途2回に分けて詳細を解説する予定です。
この秋の臨時国会の展開は見守るしかないが、成立しない場合は重ねて大変残念に思う。一方で、成立する場合は社内のルール変更・就業規則の変更は無論、従業員への周知徹底も必要となる。
実際の改正後のサポートは弊所までお気軽に連絡下さい。宍倉社会保険労務士事務所
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