宍倉社労士の労働法律相談④ 有期雇用の無期転換ルール
宍倉社労士の労働法律相談。前回までは解雇についての解説を3回させて頂きました。 今回と次回の2回で有期雇用の労働者に係る問題に取り組みたいと思います。
ご存知のように有期雇用の労働者に関しては近年幾つかの法改正が行われ、その結果として、有期雇用契約を締結している労働者も無期雇用に切り替える権利が発生する場合があります。これを「無期転換権」と言い、この無期転換権が発生するルールを「無期転換ルール」と言います。そして2018年にその状況が現実のものとなります。ご存知でしょうか?
ご存じだった方に、ここで一つ質問です
「有期雇用契約の社員はいるが、無期転換ルールが導入される前に契約が終了し、そこで更新しなければ問題は発生しない」と思っていませんか?
もし、そう思っていらっしゃるのであれば、それは大きな勘違いです!!!
有期雇用契約の満了時に契約更新をしない行為(いわゆる「雇い止め」)は解雇と同等に扱われる場合があるため、このテーマに焦点を当てます。今回は、そもそもの有期雇用契約の「無期転換ルール」がどういうものか。基本的な事項を確認し、先程の質問の開設は次回にさせて頂きたいと思います。
無期転換ルールの解説
<① 無期転換ルールの成立>
2012年8月に改正労働契約法が公布され、無期転換ルールを定めた労働契約法18条は翌年4月に施行されました。
<② 無期転換ルールはどんなルール?>
同じ使用者との間で有期雇用契約が繰返し更新された結果、労働契約の通算期間が5年を超える場合には、労働者が申込めば、その労働契約は無期の労働契約に転換するというものです。労働者が申込んだ場合使用者側はこれを拒むことができません。
<③ 通算5年に何が含まれるの?>
まず、労働契約法が施行される以前の有期雇用契約はこの通算期間に含まれません。従って2013年(平成25年)4月1日以降、新たに締結された労働契約が通算の対象になります。さらに、契約が締結されていない空白期間(雇われていない期間)「クーリング期間」があるとき、その空白期間の前の契約期間は通算されません。空白期間でリセットされ、空白期間以降の期間だけが通算の対象になります。
<④ クーリング期間とは?>
1年以上の契約期間が継続していた場合に、途中に契約を締結していない期間が6ヶ月以上ある場合は、その6ヶ月の期間をクーリング期間と呼びます。クーリング期間がある場合は、その前の労働契約の期間は通算期間には含まれず、クーリング期間後の期間しか通算されません。契約期間が1年に満たない期間で継続されていた場合のクーリング期間は6ヶ月より短い期間になりますので注意が必要です。
<⑤ 申し出はいつするの?>
申し出は、雇用契約を更新した結果、新たな契約の期間の最中に通算期間が5年を超えることになる場合、その雇用契約期間中いつでも申し出ることができます。例えば、ある労働者の雇用契約が28年3月31日に満了し、満了した時点での通算期間が4年半だったとします。この労働者が4月1日新たに1年契約を締結した場合、新たな契約期間の最中に通算期間が5年を超えることになります。
この労働者は、4月1日から翌年3月31日までの期間であればいつでも申し出ることができます。(実際に5年勤務している必要はありません)
㊟ ただし、①で記載した通り、平成25年4月より前の期間は改正労働契約法施行前のため、通算期間の対象にはなりませんので、現実にはこのようなケースは実際には発生しません。
<⑥ 無期転換後の雇用条件はどうなるの?>
無期転換を申し出た場合、転換後の雇用条件については、特段の見直しがない限り、原則として有期雇用契約で合意していた労働条件がそのまま適用されます。有期雇用が無期雇用になるだけで、正社員に転換されるものではなく原則としては同一の条件で雇用期間の定めがなくなるというものです。
以上、有期雇用の無期転換ルールについて簡単に解説しました。厚生労働省のHPにも詳しい説明がありますが、ご不明な点があれば気軽にご相談ください。次回はいよいよ有期雇用契約の更新をしないこと(雇い止め)について解説します。
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