裁判例から学ぶー退職勧奨の違法性について
2016年3月2日
<裁判の内容>
愛知県碧南市の歯科口腔外科部長だった男性医師が退職勧奨され、その退職勧奨を拒みながらも結果的に退職に追い込まれたとして4300万円の損害賠償を求める裁判を起こしていた。先月23日の判決で名古屋地裁は4100万円の損害賠償を命じ、ほぼ原告の言い分が通ったと思われる。
判決の理由として裁判長は、その退職勧奨を行ったプロセスが問題であったと指摘している。退職を拒んだ男性医師に対して病院側がその医師が所属する大学医局の教授を通して退職を求めたとのこと。このことが事実上人事権を持つ医局に退職を勧められたことになり、退職勧奨の自由な意思が妨げられたとのこと。
尚、退職勧奨された理由だが、当該男性医師がパワハラをしたとの投書が病院に届いたのが原因とのことだが、病院側はこの医師がパワハラの事実を否定し、詳しい調査を求めたにもかかわらず、調査を行わず退職勧奨を行ったとのこと。
<退職勧奨を考える>
ここであらためて退職勧奨について考えたい。退職勧奨はあくまでも会社側からの「やめた方がいいのではないでしょうか?」といった働きかけで、もちろん言われた本人は「はい。辞めます」という権利もあれば「いやです。辞めません」という権利もあります。解雇と違い、会社側が一方的に雇用契約を終了させることはできず、当然退職を勧奨された従業員の「自由意思」が尊重されるべきものです。
この退職勧奨は会社と従業員の間でトラブルの原因となりやすい事案であり、慎重な対応が必要と考えられます。
勧奨するにあたって、そのミーティング回数が多かったり、長かったり、或いは従業員を圧迫するようなものであった場合には、違法性が認められる可能性があるので注意が必要です。
<今回の事案について素朴に思うこと>
今回の事案において退職の勧奨が医局の教授からあったということで、人事権を持つ人が行ったことが問題視されたようです。
ただ、ここで素朴な疑問だが、逆に人事権を持たない人物が退職の勧奨を行うのだろうか。退職勧奨というのは一般的に人事権を持つ立場にある人間が行うことが自然ではないかと思う。むしろ人事権のない人間が行う退職勧奨とは何だろうという疑問をもつ。
退職勧奨を行う局面自体は決して珍しいものではないと思います。また、その時に実質的な人事権を持つ人物が退職勧奨の場に立ち会うことは決して珍しことではないと思います。ただ、今回の裁判結果を踏まえると退職勧奨の行い方についても充分な配慮が必要ということだろうと思います。
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