有給休暇について考える① 制度の確認(労働基準法39条)
平成28年5月
東京労働局で相談員としての職務を開始してから1ヶ月が経過した。テーマ別に見たときに、以外にも相談の多いテーマが有給休暇についてであった。
そこで、この有給休暇の制度について、幾つか確認しておきたい。小職の投稿では以下の内容に絞って3回に分けて解説したい。
1.有給休暇の制度にそのものについての確認(労働基準法39条の確認)
2.有給休暇の権利・義務についてよくある間違い・勘違い
3.有給休暇の買い取りについて
1.制度についての確認
ここでは、有給休暇の制度について定めている労働基準法39条の内容を具体的に確認し、それぞれの条文に何が記載されているかを簡単に解説します。
① 労働基準法の定め(39条1項)
労働基準法39条に定められている。第1項が以下の条文で、有給休暇付与の出発点である。
「使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。」
とされている。つまりは雇入れから半年で有給休暇の権利が発生する。
② 最初の6ヶ月で付与した以降の付与日数(第2項)
最初の6ヶ月経過時点で10日の付与ということになっているが、第2項では6ヶ月以降、1年ごとに全労働日の八割を出勤していた場合にはそれぞれ決められた日数を定めている。
1.5年→11日、2.5年→12日、3.5年→14日、4.5年→16日、5.5年→18日、6.5年以降→20日
③ 比例付与(第3項)
通常の労働者より週の所定労働時間が短い労働者に対しては前2項に定めている日数よりも少ない日数の付与で良いことになっている。これを比例付与(ひれいふよ)と呼ぶ。
具体的には、「週4日以下かつ30時間未満」の労働者が対象となり、週の所定労働日数によって具体的な日数が決められている。
ここで注意することは2点
(1)比例付与の対象となるのは「週4日以下かつ30時間未満」なので、一日の所定労働時間が仮に2時間と短い労働者であったとしても、所定労働日数が週5日の労働者は通常の労働者と同じように付与しなければならない。逆に所定労働日数が3日であっても一日の労働時間が長い場合も通常の労働者と同じ日数を付与することが求められる。
(2)所定労働時間が週で決まっていない場合、年間の繁閑の差が激しく、季節によって週の労働日が異なるケースは、年間を通した所定労働日数で比例付与が決まる。年間の所定労働日数が216日を超えた場合、所定労働日数が4日を超える労働者と同じ扱いとなり、比例付与の対象でなくなる。
④ 時季変更権(第4項)
有給休暇は原則として労働者の請求があれば与えなければならない。ただし、「有給休暇を与えることが事業の正常な業務の妨げになる場合は、他の時季にこれを与えることができる」というもの。 ここでの留意点は、有給の取得は、あくまでも労働者の権利なので、『事業の正常な業務の妨げ』という場合に時季を変更する権利があるというだけで、使用者は断ることはできない。
⑤ 計画的付与(第5項)
有給休暇の取得を推進させるために、有給休暇のうち5日を超える日数に関しては、労働者と使用者とで話し合いの上で労使協定を締結することで、有給休暇を与える時季を指定することができる。
⑥ 有給の賃金(第6項)
有給を取得した場合の賃金の支払いについての定め。
(1)平均賃金(2)有給を取得した日の所定労働時間(3)健康保険法の標準報酬日額。これら3つのうちのどれかで支払う賃金を定めなければならない。基本的には就業規則等で定めればよいが(3)を選択するときは労使協定が必要になる。
⑦ 出勤したとみなす日(第7項)
第1項で定めている出勤率に関して、『出勤した』として扱う日についての定めがある。具体的には以下のケースでは出勤扱いで出勤率を計算することとされている。
(1)業務災害で休業した期間(2)産前産後休業(3)育児・介護休業法に掛る育児休業・介護休業。
これ以外に、そもそも『全労働日』に含めるべきかどうかについては慎重に検討する必要があります。
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